[週刊住宅]連載

地主、不動産オーナーの信託活用講座

第4回
 家族信託って何?
                     

株式会社継志舎 代表取締役 石 脇 俊 司


週刊住宅 2022年7月4日号 掲載

 前回は、信託のしかたについて説明をしました。信託は、①契約による、②遺言による、③信託宣言による、3つの方法によって行います。方法は3つあるものの、信託のほとんどは契約(信託契約)による方法で行われています。ニーズにあわせて契約を作成することで、財産の管理と承継において、契約による信託はオーダーメイドで対応できることを説明しました。
 今回は、家族信託について説明したいと思います。
 信託では、財産を所有している人(委託者)が、信頼する人にその財産を託し、信頼された人(受託者)が託された財産(信託財産)を管理・処分していきます。受託者は、委託者がその財産の利益や財産そのものを給付したいと思っている人(受益者)のために、信託財産を管理・処分し、委託者の信託財産に関する目的を実現する義務を負います。第2回の稿でも説明しましたが、信託は、委託者と受託者の強い信頼関係の上に成り立っています。
 委託者が信頼する家族を受託者として、その財産を託す信託を、家族信託といっています。この「家族信託」という言葉は、信託法に規定された法律用語ではなく、一般社団法人家族信託普及協会(以下、家族信託普及協会といいます)が商標登録しているものです。商標登録された言葉ですが、家族のための信託として、皆にわかりやすい言葉でもあり、新聞・テレビ・雑誌などでも一般的に使われています。
 家族信託普及協会は、そのHPに、家族信託を「家族の家族による家族円満のための信託」と説明しています。信託の正しい知識・情報・使い方の提供、活用事例の収集・分析・共有、専門家の育成、各行政への働きかけなどを中心に活動し、『家族信託』の健全で適切な普及と安心できる制度の確立に向けて、家族信託普及協会は活動しているようです。
 本連載では、以後、家族の資産を家族が受託者となって管理・処分する信託の使い方について説明していきます。高齢となった親が持つ不動産などの資産を、子が受託者となって信託を引き受け、親が受益者として引き続き信託財産の利益を得て、親の相続が発生したときには、受託者が管理していた信託財産を子らへと承継する信託などを説明していきたいと思っています。
 高齢になった親がさらに歳を重ねていくことで、判断能力が低下していくことも考えられます。賃貸不動産は、その管理や不動産の価値の維持などに多くの判断を必要とするため、判断能力が低下した人が管理し続けることは、大変難しくなります。家族信託は、超高齢社会で高齢者に資産が偏重している日本において、今後その利用が増えていくと思われます。
《データを示すコラム:信託契約は公正証書が安心》
委託者と受託者の間で信託契約を結び行う信託において、信託契約を公正証書にすると安心です。また、信託財産を管理するために、金融機関に信託財産を管理する専用の預金口座(信託口口座といいます)を開設するには、公正証書にした信託契約の提示を求められます。
日本公証人連合会では、平成30年以降、信託に係る公正証書の作成件数等の統計を取っています。その統計によると、平成30年は2,223件、令和元年は2,974件、令和2年は2,924件の信託に係る公正証書が作成されたと公表されています。

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