[週刊住宅]連載

地主、不動産オーナーの信託活用講座

第3回
 信託はどんな仕組み②(信託のしかた)

株式会社継志舎 代表取締役 石 脇 俊 司


週刊住宅 2022年6月13日号 掲載

 前回は、信託の委託者、受託者、受益者について説明をしました。
 信託は、
  ①委託者と受託者の強い信頼関係の上に成り立つこと
  ②信託する財産の所有権を委託者から受託者に移転すること
  ③所有権の内容を分け、財産を管理・運用・処分する権利は受託者が持ち、財産の利益を得る権利は受益者が持つ
という3点について説明しました。
 今回は、信託のしかたについて説明します。
 信託をめぐる法律関係について規定する信託法には、信託は3つの方法によって行うと規定しています。
  ①契約による
  ②遺言による
  ③信託宣言による
方法の3つです。
 方法は3つあるのですが、ほとんどの信託は、契約による方法で行われています。委託者と受託者との間で結ぶ契約です。この契約を信託契約といいます。
 信託契約による信託は、契約の内容次第で多種多様なものとすることができます。委託者の意向をふまえ、オーダーメイドに資産管理と承継の仕組みを作ることができます。信託した財産(以下、信託財産といいます)の管理と処分における受託者の権限も信託契約次第です。信託財産の売却を制限したり、売却して買い換えることを可能としたり、抵当権を設定して借入れをすることができる権限を与えたりと、信託財産に関する委託者の目的を実現する義務のある受託者は、その義務を履行できるよう信託財産に関する権限を、信託契約に規定していきます。
 また、受益者と受益権の内容について信託契約の規定は重要です。受益者は、信託財産に関する利益を得る権利を持っています。信託財産の利益について、受益者は、どのような権利(受益権)を持つか、その受益権の内容を信託契約に規定します。
 前回、地主や不動産オーナーが利用している信託多くは、委託者が受益者となる信託と説明しました。それは、信託する前に信託財産を有していた委託者が、信託することで受託者に信託財産の管理・運用・処分を任せ、受益者として以前と同様に信託財産に関する利益を得るという、仕組みの信託です。そしてさらに、委託者は受益者でもあることで始まった後、受益者を別の人に変えることもできます。例えば、不動産を所有していた地主が受益者、その後、地主が亡くなったときに、受益者を地主の配偶者とすることです。
 信託した資産を所有していた人が亡くなっても信託は終了せず、受託者が信託財産を管理し続けることができます。どのような事由が生じたら信託は終了するか、それを信託契約に規定することが重要となります。
 地主や不動産オーナーが所有する不動産に関して、信託契約の内容を工夫することで、地主や不動産オーナーのさまざまな意向を実現していくことができるのです。
《データを示すコラム:商事信託と民事信託》
2007年9月30日に現在の信託法が施行されました。1923年(大正12年)に施行された旧信託法が全面改正されました。
この法律改正に端を発するような形で、信託銀行や信託会社が営業のために行う信託(商事信託)に加えて、民事信託(資産所有者の家族や家族が関係する法人がその家族のために信託を引き受ける信託)の利用が進むようになりました。高齢者の財産管理や財産承継または事業の承継などのニーズに、今後、信託の利用が広がっていくものと思われます。

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